リサーチ・クエスチョンの作り方 (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト)
著者の福原俊一さんは、1979年に北大医学部を卒業し、現在は京大の医療疫学の教授です。
経歴を読むと、臨床も10年以上していたと思われ、臨床医の視点から臨床研究を捉えています。この本は、リサーチ・クエスチョンについての非常にわかりやすい本です。
薄いので、一気に読めてしまいます。
副題にある通り「診療上の疑問を研究可能な形に」という視点で書かれています。
臨床研究の共通のゴールは、「診療に還元できる」「診療を変えられる」こと
研究計画は、研究プロトコール(研究計画書)で完成
完成までにつらく長い道のり
臨床研究7つのご法度
1. データをとってから研究デザインを考える
切れの悪い論文になる
2. リサーチ・クエスチョンが明確・具体的でない
3. 対象が不明確
4. 主要なアウトカム変数を設定しない
アウトカム変数: その研究にとって結果とみなす項目
説明変数: 原因とみなす項目
5. 変数の測定方法の信頼性と妥当性を検討しない
6. 解析計画を事前に作成しない
7. 統計的有意差のみで、臨床的・社会的に意味のある差かどうか検討しない
「p<0.05が有意」というのはパソコンが普及する前に便宜的につくられた1つの目安に過ぎない
得られた差が臨床的・社会的にどんな意味があるのかを解釈する方がずっと重要
従来の抄録スタイル
IMRAD
Methodに何を書くかわからない
構造化抄録
1. Objectives 目的
2. Design 研究デザイン
3. Setting 研究施設
4. Subjects 標的集団
5. Intervention 介入
6. Main outcome measures and analysis 主要なアウトカム変数と統計手法
検討項目が多いと、偶然に有意差が出る(検定の多重性)
7. Result 結果
8. Conclusion 結論
クリニカル・クエスチョンからリサーチ・クエスチョンに
クリニカル・クエスチョン: 漠然とした疑問
リサーチ・クエスチョン: クリニカル・クエスチョンを実行可能な形に整えたもの
シンプルで明快
よいリサーチ・クエスチョンはFIRMNESS
Feasible 実施可能
Interesting おもしろい
Relevant 切実である
Measurable 測定可能
Novel 新しい
Ethical 倫理的
Structured 構造化
Specific 明確化、絞り込み
統計的有意差<Relevance
誰にとってrelevantな疑問(アウトカム)なのか?
臨床家: 病態生理
患者: QOL
社会: Cost-effectiveness
研究者ではなく患者・医療・社会にとってrelevantであるべき
Relevantなアウトカム指標を選ぶ
リサーチ・クエスチョンの構造化:PECOまたはPICO
Patients 誰に?(対象、標準母集団)
Intervention/Exposure 何をすると?何によって?(要因、説明変数)
Comparison 何と比較して?(比較対照)
Outcome どうなる?(アウトカム)
PECOとPICOの場合分け
PECO:観察研究
リスク要因の同定・検証
PICO:介入研究
治療・予防法の評価
主要なアウトカム変数は1つに絞る
究極のリサーチ・クエスチョン
研究結果が変える
・診療行動
・患者アウトカム
・制度・政策
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