2008年10月4日土曜日

あたらしい戦略の教科書(酒井穣)

ビジネス書その1


あたらしい戦略の教科書

この本は、ビジネスという医療・研究とは一見正反対な視点から書かれた「戦略本」です。
しかし、医師(特に臨床・基礎研究もしている)には戦略は必須で、目から鱗が落ちました。

医学の情報にもドライなものとウェットなものがあると思います。
また、独自の研究にはトップの長期のコミットメントが必須だと思います。

すべての問題の原因は、必ず過去にある

戦略の定義

戦略=現在地と目的地を結ぶルート
キーになるのは、現在地の確認
カーナビ
中心メンバーの選出から始まる
「我々は変わらなければならない」と考えている人物を選ぶ
アメリカ軍の原子力空母では、危機レベルが上がるにつれて、意思決定権は現場に降りてゆく

現在地の把握: 情報収集と分析

「未来の不確実性」を下げることで、戦略立案は容易になる
3年先以降までは予測する意味なし
「すでにそこに起こっている未来を探せ」(経営の神様 ピーター・ドラッガー)
未来を予測する力(情報力)=情報の収集力×情報の分析力
同じ会社内でも情報が集まりやすいポジションにいる人が出世しやすい
「若者は、バンテージポイント(見晴らしの良い場所)でキャリアを磨け」(コンサルタント 梅田望夫)
スイートスポット=ある種の独占状態を示すエリア
フェラーリの競合は、他の自動車メーカーではなく、小型飛行機、ヨット、セカンドハウス、絵画など
優秀なビジネスマンは、競合の動向以上に自分の顧客について非常に詳しい
貴重な情報は、人々の間で取り引きされる商品
→ 等価交換の法則:何かを得るにはその代償を支払わなくてはならない
→ 物々交換ならぬ「情報交換」
ドライ情報:一般に公開されている情報
ウェット情報:ウェットな人間関係を利用して、人づてにしか入手できない情報
実務における量的比率は、ドライ情報80%、ウェット情報20%
インタビューのプロの世界では、「真実は語尾に宿る」
人間の営みは、情報をめぐる政治の力学によって成り立っている
インターネットが発達した現在でも「状況の3/4は霧の中」(クラウゼヴィッツ)
→ 信頼できる情報は25%
失敗のケーススタディは重要
全体のわずか5%の「ウェットな事実」が武器になる
情報収集と分析の理想的時間配分は、収集6と分析4

目的地の決定: 目的設定

失敗は、成功のための必要経費
優れた目標の5つの条件
1. リーダーは設定
「失敗を覚悟する勇気」「絶対に戦略を成功させてやるという気概」
2. 3年程度の期間で到達
中期経営計画など
3. 背伸びすればギリギリ届く
4. 測定できる
5. 利他性のスパイス入り

ルートの選定: 戦略立案の方法

自分が巻き込まれる重大な決定には、誰もが「自分にも参加する権利がある」と考えている
→ 戦略の立案を密室で行うことは、「現在社会のタブー」
すでに成功することが証明されたアイデアは、まずそのコピーを考える
ブレイクスルーとは、それまでトレードオフだと思われていたことをアイデア一発で解消してしまう行為
→ 「矛盾はブレイクスルーの母」
3つのリズム:「鼓笛に合わせて動く軍隊は容易に乱れない」(マキャベリ)
1. 誰が
2. いつまでに
3. 何をするのか
大戦略は小戦略に分割し、デッドラインを管理
ストラジック・プリンシプル(戦略方針)=戦略を関係者に売り込むためのキャッチコピー

戦略の実行

周囲を巻き込む
CSI(Communication Style Inventry)
組織トップのコミットメントをマネジメント
トップが長期に渡ってコミットメントを示した戦略は、自社独自の優れたものになる可能性が高い
戦略の実行計画に遅れが出ると、それだけで戦略が成功する可能性が低くなる
既得権はそれを失うとき、手に入れたときの7倍の価値に感じられる
自らの情熱を実際の行動や態度で示す
お互いを「実際に理解しているか」ではなく、「理解しようとしているか」が重要
対立が生まれることは、戦略実行における宿命
反対派を決して遠ざけないという態度が重要
アドバイスは最小限に
非公式に朝のブリーフィング
プロジェクトの成果は、最も政治的に遠い立場にある人の手柄にする

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんにちは。ご紹介いただいた本書『あたらしい戦略の教科書』の著者です。まずは本書のお買い上げ、ありがとうございました。また、嬉しいコメントをありがとうございます。

医学の情報にもドライなものとウェットなものがり、さらに独自の研究にはトップの長期のコミットメントが必要とのこと、大変興味深いです。

よろしければ、リンク先から僕のブログにも遊びに来てください。今後とも、よろしくお願いします。